3.脱水症の防止脱水症は低体温症や高山病を悪化させる要因の一つとして、普段以上に注意しておく必要があります。 現地の町での準備中やベースキャンプまでのキャラバンでも、慣れない水にあたって腹をこわすことは多いものです。下痢や嘔吐を繰り返すと、急速に脱水症状になってしまいます。 こうした病気のほかにも、激しい肉体労働による発汗や、空気の乾燥や寒気による水分の損失などの要因で、血液の水分は少なくなっています。 高所に滞在していると、酸素不足を補うための順応作用として、赤血球やヘモグロビンなど、酸素を運ぶものが増えてゆきます。通常45%程度の血液の固体成分が、60〜70%にもなってしまいます。粘性が高くなって毛細血管で詰まりやすくなり、凍傷や脳血栓の原因にもなっています。 |
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それだけ体が水分を欲していれば、すぐにお茶でも飲めばいいだろうと思われるかもしれませんが、実際にはなかなかそうは行かないものです。いくつか原因を挙げてみましょう。 ● 気温が低く乾燥しているために、汗でべたつくことがほとんど無く、発汗していてもそれほどに感じない。 ● 普段と同じ行動をとっていても水分の損失がはるかに大きいので、気が付かないうちに脱水症に近づいてしまう。 ● ザックの中では、サーモスのチタン製魔法瓶などを使用しないとお湯もすぐに凍ってしまう。行動中に持てる水の量が少ないので、行動が長時間に及ぶとその間ほとんど水分は取れない。ことにアタック時は12時間以上の行動になるのが普通。 ● 水は雪を溶かして作るので、飲むまでに時間がかかってしまう。コンロの使用できないところでは、水が得られない。 こうした悪条件があるために、飲めるときにできるだけ飲むという、あまり体にやさしくない方法を採らざるを得ないのが実情なのです。 脱水症を防ぐには、飲みやすくておなかに溜まりにくい、吸収のよい飲み物が必要不可欠です。テントに戻ったら、まず電解質を含んだスポーツドリンクをがぶ飲みして、そのあとも何度も雪を溶かして、ミルクティー、ココア、煎茶、昆布茶など、夕食前に2リットルくらいは飲んでしまいます。 |